そぼ降る雨の中、等間隔に並ぶ街灯に照らされながら、暗い夜道をフードの男が歩いている。
こんなスター・ウォーズらしからぬシーンで幕を開けた『キャシアン・アンドー/ANDOR』が、スター・ウォーズのTVドラマシリーズの最高傑作になるとは、この時点で誰が想像し得たでしょうか。
『キャシアン・アンドー/ANDOR』は、Disney+(ディズニープラス)で視聴できます。
※ 入会が必要です。
2025年4月より、待ちに待ったシーズン2が放送されることもあり、久しぶりにシーズン1を見返しました(4回目)。
シーズン2が始まる前の復習として、さらに、ドラマ内では解説されていないトリビアなどをとりあげ、より一層シーズン2を楽しむための予備知識となればという思いで記事化しました。
目次
はじめに
ドラマ『キャシアン・アンドー/ANDOR』は、スター・ウォーズのスピンオフ(アンソロジー・シリーズ)作品の一つで、最高傑作との呼び声も高い『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の前日譚です。
ディエゴ・ルナ演じるキャシアンは、映画の登場人物の一人で、反乱軍の優秀な情報将校です。
年代としては5BBYを描いています。
意外かもしれませんが、実はこの「BBY」という表現を映像作品内で初めて使用したのは、この『キャシアン・アンドー/ANDOR』でした。

「BBY」とは「Before the Battle of Yavin」の頭文字をとった略語で、「ヤヴィンの戦い以前」を指す暦法です。
「ヤヴィンの戦い」とは、スター・ウォーズEP IV『新たなる希望』で初代デス・スターを破壊した戦いを指します。
よって、『キャシアン・アンドー/ANDOR』の時代は、スター・ウォーズEP IV『新たなる希望』の5年前ということになります。
さて、記事冒頭で、私はこの作品を「スター・ウォーズのTVドラマシリーズの最高傑作」と評しました。
2025年2月10日現在、スター・ウォーズのTVドラマシリーズは次の作品が公開されています。
※公開順に列挙
- マンダロリアン
- ボバ・フェット/The Book of Boba Fett
- オビ=ワン・ケノービ
- キャシアン・アンドー/Andor
- アソーカ
- アコライト
- スケルトン・クルー
ざっと見渡すと、商業的に最も成功を収めたのは『マンダロリアン』であるという意見が圧倒的多数を占めるのではないかと思います。「いや、総合的にもNo.1だ!」という意見も多いかもしれません。
『マンダロリアン』は、ストーリー、登場キャラクター、音楽、名ゼリフ(「我らの道」、「有無は言わせん」等)そして他のスター・ウォーズ作品(レジェンズを含む)へのリスペクトや相互関連性を併せても極めて素晴らしい作品であると私も思います。
しかしながら、それを超える深みと、他のドラマにはない魅力が『キャシアン・アンドー/ANDOR』にはある、というのが個人的な評価です。
深みと魅力
『キャシアン・アンドー/ANDOR』は、スター・ウォーズの新規ファンでも十二分に楽しめるストーリーと、マニアが唸るほどの要素が随所に仕掛けられており、ライト/ヘヴィーいずれのファンも楽しめることを高いレベルで両立させています。
唯一、しいて粗探しをするならば、多くの(特にオリジナル三部作)スター・ウォーズ作品が「子供から大人まで」幅広く楽しめるのに対し、このドラマは完全に大人のスター・ウォーズとして制作されており、子供が楽しむには少々難しいのではないかと思われます。
この記事では、特にマニア向けの要素について一つずつ触れていきつつ、作品の深みと魅力をプレゼンしようと思います。
初登場の〇〇
本作品には、「はじめに」の項でも述べましたが、「BBY」という表現が映像作品で初めて使用されたことから始まり、多くの「初登場」があります。
登場人物・キャラクターであれば、初登場が多いことにさほど驚きはありませんが、それ以外の初登場が多いのです。
まず、冒頭のシーンはモーラーナ1という惑星です。
このモーラーナ1が初登場ですが、惑星が属する星系、宙域そのものが初登場になります。
- モーラーナ宙域
- モーラーニ星系/モーラーナ星系
- モーラーナ1(冒頭のシーン他)
- モーラーナ4(言及のみ)
- フェリックス(キャシアンの生活拠点)
- モーラーニ星系/モーラーナ星系
惑星では他に、キャシアンの故郷「ケナーリ」、帝国軍からの現金強奪作戦の舞台である「アルダーニ」も本作品で初めて登場しました。
また、ケナーリの先住民(ケナーリ)、アルダーニの先住民(ダーニ)ともに、それぞれケナーリ語とダーニ語という専用の言語があることも非常に興味深いところです。
それにしても、ケナーリでのキャシアンの少年時代(キャサ)を演じた子役(Antonio Viña)は中性的で非常に美しい顔立ちをしています。ディエゴ・ルナも目がくりっと大きく、中性的な顔立ちなので、キャシアンの少年時代を演じるのに彼以上の適役はいないと感じました。
と、このように、シーズン1の前半をとりあげただけで、数多くの初登場を見つけることができます。
シーズン1の後半で、キャシアンが冤罪で逮捕されて移送されるナーキーナ5も初めて登場する惑星です。
記憶のデータベースをどんどん更新していく必要がありますね。
既存のスター・ウォーズとの関連性
新しい要素を次々に出すだけではなく、既存のスター・ウォーズ銀河との関連性は、さらに深いものがあります。
最も特筆したいのは、第4話でルーセン・レイエルが「前払金」としてキャシアンに手渡したブルー・カイバーのペンダントです。
渡す際にルーセンは、「ラカタ帝国への蜂起の象徴」であると補足説明していました。
ラカタ帝国とは、無限帝国とも呼ばれ、レジェンズ・コミック『Dawn of the Jedi』に登場するラカタ種族の帝国です。
このシーンは、ラカタがレジェンズ(非正史)からカノン(正史)の仲間入りを果たした歴史的な瞬間と言えるでしょう。
カノンとの関連性としては、モン・モスマの私生活が描かれているのが斬新な試みです。
モンが既婚者で、夫が帝国の要人たちと懇意にしている様子が事細かに語られていきます。
モスマ邸で開かれるパーティにの来賓リストには、帝国のGrand Vizier(大宰相)の名がありました。
これは、パルパティーンの政治的右腕であるマス・アミダ(Mas Amedda)です。

また、ルーセン・レイエルの世を忍ぶ仮の姿である古物商として構えている「銀河古美術名品展」では、展示されているレア・アイテムも逸品ぞろいです。
会話の中では、かつてのウータパウで使用されていたこん棒が登場しましたが、それ以外にも画面に数々の興味深い品が展示されていました。(カリコリがあるのは流石にマズいんじゃないか、と思いましたが)
登場人物の魅力
主人公: キャシアン・アンドー
この作品の主人公は、言うまでもなくタイトルにもなっているキャシアン・アンドーです。
キャシアンの初登場は、前述のとおり『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(以降:『ローグ・ワン』)なのですが、『ローグ・ワン』には魅力的なキャラクターがぞろぞろと登場するので、映画を観た当時のキャシアンに対する印象を敢えて一言で表現するなら「地味」でした。
そんなこともあり、このドラマも観る前はそこまで期待をしていなかったのが正直なところです。
それがどうでしょう。
蓋を開けてみれば、深掘りすればするほどキャシアンの魅力が溢れ出てくるではありませんか。
なぜ、どのようにして反乱軍に加わるのか、その経緯が細かく描かれるとともに、それ以前の彼の生き方や考え方、そしてそれらがどう変化していくのかが見どころです。
キーマン: ルーセン・レイエル
そして、キーマンはこの人、ルーセン・レイエルです。
ルーセンの雰囲気、セリフにはしびれる物が多く、特に第3話での脱出劇やその後のフォンドア・ホールクラフト内での会話は必見・必聴です。
「欲しかったのはNS 9スター・パスユニットではない。…君だ。」
「あのクズどもと戦いたくはないか。」
などのセリフは、強く心に焼き付きます。
あ、SWGoHのスキル名にもなっている、あのセリフも忘れちゃいけませんね。
「何を犠牲にしているか?」
いやあ、とにかくカッコイイ爺さんです。
シーズン1での敵役: シリル・カーン
彼のシーズン1での挙動を語ってしまうと、ほとんどネタバレになってしまうため控えますが、シリル・カーンの正義感とその行動の結果は、様々な意味で考えさせられるものがあります。
キャシアンたちにとっては敵になるわけですが、見ていてどうしても憎めません。それどころか、共感すら覚えます。
いつの世にも、相反するもの(理想と現実、本音と建前、組織と個)が存在していて、その狭間での葛藤や苦しみを抱えているという意味では、誰もがシリルに起きた出来事や考え方に共感する点があるのではないでしょうか。
マスコット・ドロイドのビー
スター・ウォーズの登場キャラクターと言えば、ドロイドを外すことはできません。
キャシアンの育ての親であるマーヴァ(マーヴァ・カラーシ・アンドー)とクレル(クレル・アンドー)に長年仕えてきたグラウンドメク・ドロイドのB2EMOは、「ビー」という愛称で呼ばれ、キャシアンにも懐いていました。
かなり年季が入っており充電があまり長持ちせず、言葉を話すことはできるものの言語機能に障害があるようで、話す際にどもってしまいます。
R2-D2やBB-8、チョッパーのように優秀で強いドロイドではありませんが、彼ら以上に「人間らしさ」を感じさせるキャラクターです。
それでも、アンドー一家に奉仕する気持ちが強く、一生懸命できることをやろうとする姿勢は、可愛らしくもあり、ある種の切なささえも感じさせます。
その他の気になる点
ライトサイドのダークサイドの境界線
スター・ウォーズには、ライトサイド(光明面)とダークサイド(暗黒面)が描かれますが、『ANDOR』ではこの2つの境界線がいかに曖昧なものかを提示しています。
その部分が最も顕著に見えるのが最終の第12話です。
マーヴァ(キャシアンの育ての母)の葬儀に訪れたキャシアンを狙って、ルーセン、ヴェル、シンタの3名の反乱者(SWGoH的にはライトサイド)と、デドラ・ミーロ率いる帝国保安局のチーム(SWGoH的にはダークサイド)がフェリックスに集結します。
そこにはシリル・カーンの姿もありました。
双方の狙いは、ともにキャシアン・アンドーなわけですが、あくまでも生きたまま捉えることを徹底しようとするデドラに対して、ルーセンは口封じのために殺害する想定で動いています。
この対比は非常に興味深いです。
第10話で、ロニ・ヤング(帝国保安局にスパイとして潜入している)との会話からも分かるように、ルーセンは大義のために自身の「すべて」を犠牲にして、汚い仕事に手を染めているということですし、帝国軍の中にも、自分の信じる正義を重んじて行動する士官も少なくないということです。
ビックス・カリーンの悲劇
このドラマのヒロインとして存在感を放つビックスですが、物語での彼女には様々な悲劇が襲い掛かります。
恋人のティム・カルロが自分を助けようとして射殺され、懇意にしていたサルマン・パアクは拷問を受けて命を落とし、ビックス自身も捕らえれた上にひどい拷問を受けます。
特筆すべきは、この拷問の手法です。
シーズン1の第9話『誰も聞いちゃいない』で帝国保安局に捕らわれたビックスは、監禁され拷問を受けます。
拷問を担当するドクター・ゴーストは、準備を整えながら拷問についての説明を始めます。
昔、ダイゾン・フレイという月の珍しい知覚種族がいて、帝国に歯向かった。
その報いとして、その種族は大虐殺に遭い、絶滅した。
任務遂行の証拠として、虐殺の様子を記録し、送信された。
記録を確認すると、その種族は絶命する寸前に悲痛な声を出す。
その録音をチェックしていた通信将校の3名は、数時間後にひどい精神状態で発見されることとなる。
帝国軍はその録音データの声を研究し、種族の子供が発する声に特殊な効果があることを発見する。
つまりは、その知覚種族の子供が発する断末魔の声は、人間の精神状態に致命的なダメージを与えるということだ。
身体を拘束され、ヘッドフォンでその音を強制的に聞かされ始めたビックスは、一瞬にして苦悶の表情が浮かび、数秒後には発狂し始めるのでした。
ヴェルとシンタの関係
前半の「帝国軍の現金強奪」ストーリーでは、リーダーとメンバーとして以上の関係が見えてこなかった二人ですが、後半には気になる言動が見られます。
フェリックスで二人になった際の会話で、「やっと会えたのに、また離れ離れ?」と責める口調のヴェルに対し、シンタは「作戦が何よりも優先。二人の関係については作戦が終わった後で」という趣旨の発言をします。
また、手を握ったり、「血が出ている」とやや大げさに心配したり、ヴェルはシンタに対して「仲間以上の感情」を抱いているように感じさせるシーンが描かれています。
ヴェルがシンタを見る時の眼差しも、それを表現しているように感じます。
シンタの方も「二人の関係」と言っていることから、類似の想いを持っているのではないかと推察されます。
モスマ一家との会食の場面で結婚の話題が出た際に、ヴェルは「そんな気はない」と明言していることも、この説を後押ししています。
シーズン2では、この二人の関係がどうなっていくのかについても注目したいポイントです。
(まるでデドラのストーカーのようになりつつあるシリル・カーンですが、この二人の今後の関係についても気になりますね。)
キノ・ロイのその後
最終話で衝撃の事実(この詳細は明かさない方が良さそうなので)が判明し、ナーキーナ5の工場に取り残される形となった彼がその後どうなったのか。
どうにか生きて脱出していることを祈りつつ、シーズン2での再登場というサプライズを期待せずにはいられません。
SWGoHの観点
SWGoH(スター・ウォーズ/銀河の英雄)の観点から見ると、これまでのドラマシリーズのケースでもそうだったように、シーズン2のタイミングで新ユニットが登場する可能性が考えられます。
『ANDOR』からは今のところ、ルーセン・レイエルのみリリースされており、他の登場人物を見渡してもゲームのユニットになりそうなキャラクターが見当たりません。
特に、ダークサイドは非常に難しいと思われます。
シーズン1から強いて挙げればデドラ・ミーロぐらいでしょうか。
個人的には、シップが出るのではないかと予想しています。
ルーセンのシップ、V-21.1シヴレックス、通称「フォンドア・ホールクラフト」です。
ユニット名:フォンドア・ホールクラフト
属性:ライトサイド
カテゴリー:アタッカー、反乱軍、カーゴシップ、(新属性)
ルーセンが第11話で、セグラ・マイロにソウ・ゲレラに会いに行き、惑星を出ようとした際、軌道上でパトロールしていた帝国軍のキャントウェル級アレスター・クルーザーにトラクター・ビームで捕まります。
そこから脱出する際の一連のシーンで戦闘が発生し、船の後方に装備されている破砕チャフによりトラクター・ビーム放射装置を粉砕します。
さらに、追ってくるTIEファイターを撃墜しますが、その方法と使用された武器は、これまでに見たことのないものでした。
船体の両脇から、尋問官などが使用するダブル・ブレードのライトセイバーのような熱線が伸びると、船自体を回転させて2機のTIEファイターを切り裂くように撃墜するのです。

ルーセン風に言うならば、「このエフェクトを、ゲーム内のバトルで見たくはないか。」というものです。
まとめ
以上のように、『キャシアン・アンドー/ANDOR』は、ストーリーが面白いというだけに留まらず、観れば観るほど新たな「気づき」があり、魅力的なキャラクターも書ききれないほどに登場する素晴らしいドラマになっています。
『ローグ・ワン』もそうでしたが、ジェダイもシスもライトセイバーも出ない、その上『ANDOR』にはフォースという言葉すら登場しないにもかかわらず、細部に至るまで見事なまでに「スター・ウォーズしていて」のめり込みます。
また、他のドラマはすべてワンシーズンが全6話から8話で構成されているのに対し、『ANDOR』は全12話となっており、制作陣の並々ならぬ気合を感じますね。
本記事では、この物語の全容をぜひ目と耳と心で味わっていただきたいので、全体のあらすじについては説明していません。
ざっくりと構成のみお伝えすると、前半の「帝国軍の現金強奪」と後半の「強制労働からの脱出劇」に分けることができます。
どちらも目が離せない面白さです。
さらに、このドラマの前日譚、『カタリスト』という小説もありますので、興味のある方はご一読をお勧めします。
本記事についての質問、誤りの指摘、ご意見ご感想などありましたら、ぜひコメント頂ければ幸いです。
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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