スター・ウォーズのファンであれば、「非常時大権」という言葉をご存じかと思います。
映画『エピソードII/クローンの攻撃』で、あのジャー・ジャー・ビンクスが元老院議会で動議を提出し、可決された「軍隊創設法案」に含まれるのが「非常時大権」です。
文字通り、非常時(緊急事態時)に際し、議長は任期を延長され、極めて大きな権利を持つことになります。
これによりパルパティーンは、共和国軍を最高指揮官として自由に動員し、また、法廷においても絶対的な権力を持つ裁定者となりました。
当時、世界中のファンの間では動議を提出したジャー・ジャーに批判が集中しましたが、言うまでもなく諸悪の根源はパルパティーン(ダース・シディアス)その人でした。
騙された人々に対して「なんで騙されちゃうかなぁ。シスの思うツボじゃないか。」と感じた視聴者も多かったかと思います。
さて、日本でこのような法案が出てきた時、私たち国民は適正な判断ができるでしょうか。
この話は『スター・ウォーズ』というフィクションの枠を超え、現代の日本社会に忍び寄っているのです。
目次
1.「国会機能維持条項」を知っていますか?
この条項は、遡ること10年以上前の2012年に自民党が憲法草案として提案した「緊急事態条項」が元となっています。
「国会機能維持条項」は、その「緊急事態条項」の中の一部、「議員の任期延長」に関する部分の取り決めを指す表現として今年2025年に登場しました。
「まろやかな名前に体よく変えた」という見方をされる場合も少なくありません。
2. どんな内容なのか
2.1. 発動要件
大規模災害、武力攻撃、感染症などで選挙実施が困難と判断された場合に発動します。
2.2. 任期の延長期間
2025年7月現在では6か月程度となっていますが、再延長を可能とする案も議論されています。
2.3. 任期延長の対象
衆議院議員および参議院議員の任期が延長の対象となります。
3. この条項の問題点は何か
3.1 任期延長の判断基準
全項 2.1. の「発動要件」を見ると、任期延長が発動する条件として「大規模災害、武力攻撃、感染症などで選挙実施が困難と判断された場合」となっています。
着目すべきは「など」です。
「など」の記述があることで、明記されている事態以外でもその時の政権の都合で緊急事態を判断されかねません。
それにより、作為的・恣意的な任期延長を発動される可能性が高まります。
ちなみに、スター・ウォーズの「非常時大権」発動には議会の承認が必要だったことから、それ以上に「国会機能維持条項」は危険な仕組みであるという見方ができます。
元老院議会全体がパルパティーン議長の掌の上で踊らされ、完全に掌握されていたことを考えれば、承認制度があっても形式だけとも言えますが…。
3.2. 「自由は死にました。万来の拍手の中で」
これは、パドメ・アミダラ議員の有名なセリフですが、「国会機能維持条項」はこの状況を引き起こしかねない重大なリスクを孕みます。
前項 3.1. のとおり、緊急事態の判断が政権に委ねられている以上、彼らの都合次第で政権交代のチャンス、つまり選挙の機会が不当に奪われる可能性すらあるわけです。
民主主義破綻のきっかけと言っても過言ではないと感じられます。
3.3. 権力集中
フォースの集中なら良いですが、権力が一点に集中することが様々な問題を引き起こすことは説明不要でしょう。
政権が任期を自由に制御できるようになれば、当然のことながら権力は一極集中します。
それにより、民が国の主としての権利を持つ「国民主権」という考え方そのものが葬り去られる可能性があります。
主権が国民から政権へと渡ってしまえば、それに伴い人権そのものが制限される未来も否定できなくなるでしょう。
パルパティーンも、クローン大戦に決着がついたにもかかわらず、その後も議長の座に居座り続けましたよね。
3.4. 問題点まとめ
いかがでしょうか。
非常に危険な内容であることがわかるかと思います。
「いやいや、心配しすぎでしょう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、金と権力が複雑に絡み合う政治の世界では、これぐらいのことが現実に起こっても不思議ではありません。
そもそも、「選挙で当選したからと言って、掲げた公約をすべて守るわけではない」と国会質疑で答弁しているシーンすらあるぐらいですから。
何をやる(やらない)と言われても、素直に文言通り受け取ることなどできるはずがありません。
※ 音量注意👇
4. 誰がこの条項に賛成しているのか
では、この条項に賛成している政党はどこなのかについて2025年7月現在の状況をお知らせします。
4.1. 賛成した政党
| 政党 | 人数 |
|---|---|
| 自民 | 21 |
| 維新 | 4 |
| 国民民主 | 3 |
| 公明 | 3 |
| 有志の会 | 1 |
4.2. 反対した政党
| 政党 | 人数 |
|---|---|
| 立憲民主 | 16 |
| れいわ新選組 | 1 |
| 共産 | 1 |
4.3. この状況から言えること
このままでは、賛成多数で可決してしまう可能性があります。
※ 本条項は憲法改正の発議なので、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成が必要であり、憲法審査会単体では改正案を成立させることはできません。
5. 私たちに何ができるのか
まずは現実、そして真実を知ることが重要です。
そうすることで、自分たちの身の回りに起きている、あるいはこれから起きようとしている重大な問題を認識することができます。
そうすれば、自ずと政治への興味・関心は喚起されていくでしょう。
20年、30年も昔と違って、「どの党が与党になろうと、誰が総理になろうと大差ない」という時代は終わりました。
スター・ウォーズの世界では、最終的にはジェダイが帝国の支配・圧政を終わらせました。
しかし、現実世界にジェダイはいません。
フォースを持たない国民ひとりひとりが結集することでのみ、不当な勢力を権力の座から引きずり下ろすことができるのです。
パルパティーン議長の掌の上で転がされている民衆や元老院議員のようにならないためにも、今こそ「投票」という名のライトセイバーを手に取ろうではありませんか。
当ブログはあくまでもスター・ウォーズ、そしてSWGoHをメインテーマに据えています。
そのため、各政党の「国会機能維持条項」への賛否以外の政策に踏み込んだり、どの党に投票すべきといった持論を展開したりするつもりはありません。
最後に
日本人は世界的に見ても、政治に関心が薄い国民として認知されています。
どうしても政治は「小難しいもの」「自分とは無関係」というイメージが先行しますし、仲間内や友達同士などで政治の話をしようものなら、変わり者として白い目で見られるような風潮もあるように感じます。
もちろん、特定の政党を押し付けるような勧誘行動は慎む方が良いと考えますが、政治をタブー視してシャットアウトすることとは別です。
政治に興味を持たず、選挙にもいかない人が増えることによって、どうなるでしょう。
利権にまみれた組織票が相対的に強くなりますね。
国民が貧しくなるような悪法をやりたい放題に施行しても、投票に行かない人が増えることで、政権が変わらない仕組みを維持する手助けになっているのです。
選挙に行かない主張でよく見かける理由のひとつに「投票は権利であって義務ではない。よって、投票しない権利もある」という言い分があります。
これは、あたかも自分の意志で権利を選択しているように見えますが、結果的には政権与党にとって望ましい方向へと見事に操られているのと同じ事態を招いているのです。
どうしてそうなってしまったのでしょうか。
日本での政治教育を思い出してみると、その原因のひとつ(これが全てというわけではない)が浮かび上がってきます。
学校教育では、制度や仕組みを暗記する対象として教え、政治の実態に触れることは皆無に等しいです。
自分たちの生活に直結するものという実感がわかないような内容、と言えるでしょう。
しかし、政治は日々の生活を左右するものであり、それを決めるのは私たち自身なのです。
日本は「国民主権」の国なのですから。
そんな中、昨年(2024年)の衆院選で、与党が過半数割れという結果になったのは奇跡的とも言えるでしょう。
ある意味、第一デス・スターを破壊した「ヤヴィンの戦い」レベルの快挙です。
となると今回の参院選は、まさに決戦「エンドアの戦い」ということになりますか。
スター・ウォーズのオリジナル三部作は別ですが、プリクエル三部作や『クローン・ウォーズ』、最近では『キャシアン・アンドー』など、銀河における政治について深く描かれている作品が多いです。
前述の作品群を政治的観点から観て「面白い」と感じられる方は、ぜひ現実社会での政治とも結び付けてみると興味が湧くのではないでしょうか。


コメント
石破総理の発言には続きがあって、
「我が党の中でそれをどう考えるのか。例えば、この後御議論があるのかもしれませんが、アジア太平洋地域における安全保障の在り方とか、日本とアメリカの地位協定とか、そういうことも掲げました。それは、党においてそのような組織を求めて、総裁はこういうことを言って当選もした、だけれども、我が党の中にはいろいろな意見があるわけで、それを議論として取り上げるという仕組みがあるのは我が党のいいところだと思っております。」
公約をそのままではなく、議論を重ねてより良いものにする。だから発言したものと全く同じ公約ではない。という意味なんですよね
石破さんも分かりづらい説明するから悪いんだけどね
切り抜き動画は、バズることを前提に都合の良いところのみ切り取るんで、真に受けないほうが良いかと・・・
コメントありがとうございます!
仰る通り発言の一部を切り取った動画なので、この箇所だけを鵜呑みにすることはできないでしょう。
とは言え、これまでの数十年に渡る増税の繰り返し、それでもまだ財源が足りないと宣いさらなる増税をしようとする厚顔ぶり。にもかかわらず消費税増税と反比例するかのように減税されていく法人税。繰り返される改憲提案、劣悪な労働条件での外国人政策などなど、とても賛同できません。
そういう意味では、国民に対する裏切りを端的に表す象徴的な動画であるように感じます。
今、私たちは歴史の転換点にいるのだと思います。