以前の記事で、「参院選直前特番」として、当時の日本をスター・ウォーズの世界になぞらえて考察しました。
今回はその衆院選バージョンです。
参院選では、政権与党が過半数割れという結果に終わりました。
まさに、投票した国民の一人ひとりがルーク・スカイウォーカー、あるいは反乱軍の英雄として勝利を飾ったわけですが、エピソードIXのシス・エターナルの皇帝さながら悪法とともにパルパティーンは復活を遂げました。
目次
何を問題視しているのか
世論として、最も注目されているのは経済対策でしょうし、特に「減税」が選挙の争点の筆頭に上がるのではないかと思います。
私自身もその点は、投票する政党選びの基準として重視しています。
しかし、今回の記事でフォーカスするのは、憲法改正草案です。
「憲法のことなら任せろ!」というような人は少ないはずで、国民の多くに認知されている有名な条文は憲法九条でしょう。
今回、そこに新たに「9条の2」などを設け、自衛隊の保持を明記する案が表立って議論されています。
これには賛成意見の国民も一定数(世論調査の結果では過半数を超えている)おり、公平な視点で見て頷ける点もあります。
具体的には、「自衛隊は憲法違反だ」という議論に終止符を打ち、命を懸けて働く隊員の誇りと地位を明確にしたいという考えです。一理ありますよね。
しかし、この憲法九条への自衛隊についての明記は、氷山の一角に過ぎないというのが問題です。
憲法改正草案の問題点① ―― 憲法前文
まず、憲法前文から書き換えようとしています。
現行憲法の前文では「個人の尊重」がはっきりと謳われていますが、改正案では個人以上に「国家、伝統、家族、国防」が強調されるようになります。
つまり、「国民よりも国家の方が大事である」という国家第一主義的な考え方が反映されていると言えます。
また、前文はすべての条文の土台となるため、国民ひとりひとりよりも「国益や国家の安全が最優先される」ということが、前提として憲法の全体にかかってくることになります。
安全保障や国のためという大義名分で、個人の自由や権利が後回しにされてしまう危険性を感じませんか?
参考文献として、以下に現行の日本国憲法の前文も掲載しておきます。
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協調による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権能は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。
日本国憲法前文
憲法改正草案の問題点② ―― 緊急事態条項
以前の記事でも指摘した「緊急事態条項」の新設です。
災害や有事(戦争など)の際に、内閣が法律と同じ効力を持つ命令を出せるようにする条項です。
問題点は、言うまでもないかもしれませんが、国会の承認なしで内閣が命令を出せるようになり、緊急事態の定義や期間も内閣が決定できます。
そうなれば、三権分立(※1)によるチェックも効力を失い、全ての権力が内閣に集中する可能性があります。
集会やデモの制限から始まり、さらには移動や言論、報道への圧力が「合法」として行われる危険があり、「独裁化の入り口」と表現しても過言ではないでしょう。
まさにパルパティーンの「非常時大権」と類似のやり口です。
※1:三権分立
国家権力を立法・行政・司法の3つに分け、それぞれを独立した機関(国会・内閣・裁判所)が担当して相互に抑制・均衡し合い、権力の濫用を防いで国民の権利と自由を保障する仕組み。
憲法改正草案の問題点③ ―― 基本的人権の制限
人権の制約基準について、現行の「公共の福祉」から「公益及び公の秩序」という表現に変更するという案です。
一見すると、些細な変更のように感じられるかもしれません。
しかし、「公益」や「公の秩序」という言葉は極めて曖昧であり、その中身を判断・決定するのは政府ということになります。
つまり、この改正案が通った未来では、政府に対する批判や少数意見が「公の秩序を乱すもの」と見なされ「犯罪」になるかもしれません。
逮捕まではされずとも、言論の自由が大幅に束縛されたり、取り締まりの対象になったりする可能性は十分にあります。
この状態、日本だと思えますか?
憲法改正草案の問題点④ ―― 国民の義務の大幅な追加
憲法というのは、「国民が罪を犯した場合などに備えて様々な決め事が書かれているもの」として認識している方が多いかもしれません。
ですが、現行の憲法では、政治家の力を制御・制限するための条文の方が遥かに多く、国民にとっては「権利」が書かれているものが多いです。
現行の日本国憲法において、国民が守るべき義務として明記されているのは、皆さまご存じのとおり3つだけです。
- 教育を受けさせる義務(第26条 第2項)
- 勤労の義務(第27条 第1項)
- 納税の義務(第30条)
しかし、憲法改正草案では、新たに「国を守る義務」「家族を助け合う義務」「社会的責任」などが憲法に盛り込まれます。
よく考えてください。
国民が国を守る義務が明文化され、憲法によって課せられるわけです。
さらに、「国民は、この憲法を尊重しなければならない」(第102条)という条文も追加されます。
「いやいや、憲法を守る義務はもともと現行の憲法にもあるんじゃないの?」と思われた方もいるかもしれません。
はい、憲法を順守しなければならないという条文はあります。しかし、「国民が」ではありません。
憲法第九九条です。
条文を見てみましょう。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
いかがでしょうか。
自民党から出ている憲法改正草案が、如何に国民の権利は弱めて義務を増やし、逆に政治家の義務は取り払って権力を増大させようとしているか。
このようなとんでもない憲法改正案を、「高市人気」に乗っかって議席数を大幅に増やし、数の力で可決させる。
これも、こんな時期に解散総選挙に持ち込んだ理由のひとつなのだろうと思います。
もはや選挙も、まるで「推し活」のようになってしまった現在の日本を象徴しているかのようです。
何はともあれ選挙に行こう
調査や構成に時間がかかり、記事の公開が投票日の前日ギリギリになってしまいました。
あと数日早く公開できていればと後悔もありますが(ダジャレではない)、どうにか期日に間に合わせられて良かったです。
それにしても、この憲法改正草案の中身、参〇党の憲法案と似ている個所が非常に多いですよね。
やはり元がアレだからなんでしょうか。
「これ以上、パルパティーン最高議長の暴挙を許すことはできない」
一人でも多くの方にそのように感じていただければ幸いです。


コメント
反乱軍やレジスタンスのような多大な犠牲を我々が払うようなことが無いようにしたいものです。
明日、自由が万雷の拍手の中で死なないことを祈ります。
コメントありがとうございます!
真綿で首を絞めるようにジワリジワリと破滅に向かっていくと、なかなか実感として危機を感じにくいのかもしれませんよね。
もう政治に期待はしていないのですが、あまりにも酷い方向に進んでいきそうで、祈る想いでの投票になります。
ご返信ありがとうございます!自民の改憲草案で目立たないけど不味いこと言ってる、の代表は第13条の個人の尊重を削除する点かと思います。
同じくあまり期待はできてませんが、この国で生きる以上どうせ無関係では居られないのでせめてウンコ味のウンコを引かないように祈るばかりです。
その通りですね!
政治に過大な期待はできませんが、コメント主様のように「無関係ではいられない」と行動に移す国民が増えてくれることには期待が持てました。
重ねてありがとうございます🙇
非常に共感できる内容でした。私は今受験生であり、日々選挙活動の騒々しさに頭を悩ませています。こんな時期に解散総選挙をすると決めた政府にはさっさと退いてもらいたい(かといって他にマシな政党があるかと言われると話は別ですが)ところですが、私自身あと1ヶ月ほどしないと有権者になれず、明日の投票に行くことができないのが残念でなりません。日本が破滅へと向かっていかないことを祈るばかりです。
コメントありがとうございます!
確かに、「高市人気」に忖度しているのか何なのか、国会や憲法審査会を見てもまともに戦っている野党は一握りで、政策をとっても一長一短ですよね。
「完璧」な政党・政策はないという前提に立ち、自分にとっての政策の優先度を決めて、そこに近い政党を選ぶことしかできないのかもしれません。
次の選挙では投票権を得て、反乱軍パイロットとして飛び立つ姿を楽しみにしてきます!
ご返信ありがとうございます!与党が3分の2を超えることがほぼ確実になりましたね。暴走せずにいてくれるといいのですが、、、
我々には祈ることしかできませんね。
もしもの時に備えて我々国民は自衛手段を講じていく必要がありますね。
ブレーキをかける政党がいなくなった今後の政権運営に注視です。