整数の指数:べき乗のルールと指数法則の基本

数学の部屋

指数は、数学の世界だけでなく、物理学、経済学、情報科学など、多くの分野で使用される極めて重要なツールです。
特に、高校数学で学ぶ対数(\(\log\))を深く理解するためには、指数の定義とルールを曖昧なく把握しておく必要があります。

例えば、「2を3回かけた数」を \(2^3\) と書くことはご存知かもしれません。
しかし、指数が 0 や負の数になったとき、「\(2^0\) はなぜ \(1\) なのか?」「\(2^{-3}\) はなぜ \(1/8\) になるのか?」という疑問に、論理的に答えられるでしょうか?

この【指数徹底マスター】シリーズの第1回では、計算の基本となる「整数の指数」に焦点を当てます。
自然数、ゼロ、負の指数の意味を一つ一つ丁寧に掘り下げ、すべての指数計算の基礎となる「指数法則」を徹底的に学び直しましょう。

この記事を読めば、指数に関する疑問が解消し、「すべての指数の定義は、指数法則を守るために決められた」という、数学の背景にある美しい構造が理解できるはずです。

第1章:自然数指数における基本法則

本記事では、整数の指数を扱いますが、まずは正の整数(つまり自然数)の解説からスタートします。

1.1. 指数 \(a^n\) の意味:同じ数を繰り返しかける操作

指数とは、「ある数 \(a\) を何回かけるか」を小さく数の右上に書くことで表現する記法のことです。

例えば、2を3回かける計算は \(2 \times 2 \times 2\) ですが、これを指数の形で \(2^3\) と書きます。

\(2^3 = 2 \times 2 \times 2 = 8\)

この \(2^3\) という表現の中で、各部分には名前がついています。

  • てい:かけられる元の数(上記の例では \(2\) が底となる)
  • 指数しすう:かける回数(上記の例では \(3\) が指数となる)

より一般的な数式で表現すると、自然数 \(n\) に対して、

\(a^n = \underbrace{a \times a \times \dots \times a}_{\text{n個}}\)

となります。この \(a^n\) を「\(a\) の \(n\) じょう」と読みます。

注意点: 自然数指数を扱う場合、底 \(a\) は特に条件はありませんが、今後、指数を0や負の数に拡張していく過程で、\(a\) は「0ではない」という条件が付くことになります。

1.2. 「指数法則」とは

指数法則とは、指数を使った掛け算や割り算を行う上で、計算を圧倒的に簡単にするためのルールのことです。

ひとつ例を挙げてみましょう。
\(2^3 \times 2^4\) という計算を考えます。

  • \(2^3 = 2 \times 2 \times 2\)
  • \(2^4 = 2 \times 2 \times 2 \times 2\)

この二つをかけるということは、2を合計で \((3 + 4)\) 回かけることになります。

\(2^3 \times 2^4\)

\( = (2 \times 2 \times 2) \times (2 \times 2 \times 2 \times 2)\)

\( = 2^7\)

この結果から見えてくるのは、底が同じ数である指数の掛け算では、指数同士を足せばよいというシンプルなルールです。

1.3. 自然数指数における5つの基本法則

自然数 \(m, n\) に対して、以下の5つの指数法則が成り立ちます。

1.3.1. 法則1:掛け算は指数の足し算

底が同じ数の掛け算は、指数を足せば求まります。

\(a^m a^n = a^{m+n}\)

計算例: \(3^2 \times 3^5 = 3^{2+5} = 3^7\)

1.3.2. 法則2:割り算は指数の引き算

底が同じ数の割り算は、分子の指数から分母の指数を引き算すれば求まります。(ただし、\(m \gt n\) とします。)

\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n} = a^{m-n}\)

計算例: \(\displaystyle \frac{5^7}{5^4} = 5^{7-4} = 5^3\)

1.3.3. 法則3:累乗の累乗は指数同士の掛け算

指数がついた数(累乗)をさらに累乗するときは、指数同士をかけ算します。

\((a^m)^n = a^{mn}\)

計算例: \((4^2)^3 = 4^{2 \times 3} = 4^6\)

1.3.4. 法則4:積の累乗

積全体を累乗するときは、各要素に指数を分配します。

\((ab)^n = a^n b^n\)

計算例: \((2x)^3 = 2^3 x^3 = 8x^3\)

1.3.5. 法則5:商の累乗

商全体を累乗するときは、分子と分母の両方に指数を分配します。

\(\displaystyle \left(\frac{a}{b}\right)^n = \frac{a^n}{b^n}\)

計算例: \(\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^4 = \frac{2^4}{3^4} = \frac{16}{81}\)

第2章:指数法則を維持するための拡張 「0乗の定義」

この章では、「0乗」が \(1\) になる理由について、指数法則を用いて論理的に解説します。

2.1. \(a^0\) を定義する必要性

第1章で学んだ指数法則のうち、「割り算は指数の引き算」の法則(法則2)を思い出してみましょう。

\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n} = a^{m-n} \quad (\text{ただし、} m \gt n)\)

この条件「ただし、\(m \gt n\)」が邪魔ですよね。
「いや、ぜんぜん邪魔じゃない」と思う方もいるかもしれませんが、それだと話が進まないので、邪魔ということで進ませてください。

\(m \gt n\) の条件に関係なく、法則が常に成り立つようにしたいと考えます。
そこで、もし \(m = n\) の場合、この法則をそのまま適用してみるとどうなるでしょうか。

\(\displaystyle \frac{a^m}{a^m} = a^{m-m} = a^0\)

なんとこの計算により、右辺に \(a^0\) という新しい指数が登場しました。
これが、\(a^0\) を定義する必要性です。

2.2. 指数法則(割り算)から \(a^0 = 1\) を導く

\(a^0\) の値を決めるには、先ほどの式の左辺 \(\displaystyle\frac{a^m}{a^m}\) を考えれば簡単です。

この式は、「ある数 \(a^m\) を、同じ数 \(a^m\) で割る」ことを意味します。
分母と分子が全く同じ数であるため、この値は必ず \(1\) になりますね。

\(\displaystyle \frac{a^m}{a^m} = 1 \quad (\text{ただし、} a \neq 0)\)

ここで、底 \(a\) が \(0\) ではないという条件が必要です。
「この条件は邪魔ではないのか?」と疑問を持たれるかもしれませんが、\(a=0\) の場合、\(0 \div 0\) となり、これは数学的に禁止されている「0除算」となります。
したがって、この条件は必須で、指数 \(0\) の定義から \(a=0\) のケースは除外されます。

そして、セクション 2.3. で証明したとおり、\(\displaystyle\frac{a^m}{a^m} = a^0\) でしたね。

以上のことから、以下の結論が導かれます。

\(a^0 = 1 \quad (\text{ただし、} a \neq 0)\)

つまり、すべての数は、0乗すると \(1\) になるのです。
これは、指数の引き算の法則を \(m=n\) の場合にも成り立たせるために、数学者が論理的に決めたルールにすぎません。

2.3. 例題:0乗を含む計算

\(a^0 = 1 \quad (\text{ただし、} a \neq 0)\) の定義により、計算の幅が大きく広がります。

例題1:

\(5^0 = 1\)

例題2:

\(-3^0\)

(\(0\) 乗の対象は \(3\) のみで、マイナス記号は含まれないことに注意が必要です。)

\(-3^0 = – (3^0) = -1\)

例題3:

\((2x)^0\ \quad (\text{ただし、} x \neq 0)\)

(\(0\) 乗の対象はカッコ内の \(2x\) 全体であることに注意が必要です。)

\((2x)^0 = 1\)

第3章:指数法則を維持するための拡張 「負の指数の定義」

この章では、負の指数 \(a^{-n}\) が「逆数」になる理由について、指数法則を用いて論理的に解説します。

3.1. \(a^{-n}\) を定義する必要性

第2章と同様に、ここでも指数法則(法則2:割り算は指数の引き算)が、「\(m \gt n\)」の条件に関係なく常に成り立つようにしたいという動機から、負の指数を導入します。

\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n} = a^{m-n}\)

ここで、分母の指数 \(n\) が分子の指数 \(m\) よりも大きい場合を考えてみましょう。
例えば、\(m=3\)、\(n=5\) だったとします。

\(\displaystyle \frac{a^3}{a^5} = a^{3-5} = a^{-2}\)

右辺に \(a^{-2}\) という、負の指数が登場しました。
これが、\(a^{-n}\) を定義する必要性です。

ここから、この \(a^{-2}\) の値を、指数法則が成立するように定義する必要があります。

3.2. 指数法則から \(a^{-n} = \frac{1}{a^n}\) を導く

\(a^{-2}\) の値を決めるために、先ほどの式の左辺を、定義に戻って計算してみましょう。(\(a \neq 0\) とします)

\(\displaystyle \frac{a^3}{a^5} = \frac{a \times a \times a}{a \times a \times a \times a \times a}\)

分子と分母にある共通の \(a\) を約分していくと、次のとおり分子には \(1\) が、分母には \(a\) が 2つ残りますね。

\(\displaystyle \frac{a \times a \times a}{a \times a \times a \times a \times a}\)

\(\displaystyle = \frac{1}{a \times a} = \frac{1}{a^2}\)

セクション 3.1. で既に確認したとおり、\(\displaystyle \frac{a^3}{a^5} = a^{-2}\) でした。

以上のことから、以下の結論が導かれます。

\(\displaystyle a^{-2} = \frac{1}{a^2}\)

より一般的に、任意の自然数 \(n\) に対して、負の指数 \(a^{-n}\) は以下のように定義されます。

\(\displaystyle a^{-n} = \frac{1}{a^n} \quad (\text{ただし、} a \neq 0)\)

これで負の指数を含む場合であっても、指数法則が矛盾なく常に成り立つことになります。

3.3. 負の指数の補足と覚え方

負の指数 \(a^{-n}\) は、単に数がマイナスになったのではなく、「底 \(a\) の \(n\) 乗の逆数」を意味します。

  • 逆数: \(\displaystyle 2^{-3} = \frac{1}{2^3} = \frac{1}{8}\)

負の指数は、その数を「分母に移動させ、指数を正にする」と考えると覚えやすいでしょう。

3.4. 例題:負の指数を含む計算

例題1:負の指数を正の指数で表す

\(\displaystyle 4^{-2} = \frac{1}{4^2} = \frac{1}{16}\)

例題 2:逆数を負の指数で表す

\(\displaystyle \frac{1}{x^5} = x^{-5}\)

例題 3:分数の指数

\(\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^{-2}\)

これは、「\(\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^2\)」の逆数を意味します。

\(\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^{-2} = \frac{1}{\left(\frac{2}{3}\right)^2} = \frac{1}{\frac{2^2}{3^2}}\)

\(\displaystyle = \frac{1}{\frac{4}{9}} = 1 \div \frac{4}{9}\)

\(\displaystyle = 1 \times \frac{4}{9} = \frac{9}{4}\)

💡負の分数の指数は、上記の手順を踏まずとも「分母と分子を入れ替えて指数を正にする」ことで、より簡単に計算できます。

第4章:応用問題に挑戦(複雑な指数の計算)

これまでに学んだ5つの指数法則を用いて、負の指数や0乗が混ざった複雑な計算に挑戦してみましょう。

4.1. 例題 1:すべて正の指数として表す

\(2 x^{-3} y^5 \times 4 x^6 y^{-2}\)

  • 計算のヒント: 底ごとのグループ化と法則1の適用
    • 定数、変数 \(x\)、変数 \(y\) の部分に分けて、法則1 を適用します。

\((2 \times 4) \times (x^{-3} \times x^6) \times (y^5 \times y^{-2})\)

法則1: 「掛け算は指数の足し算」より

\(= 8 \times x^{(-3+6)} \times y^{(5+(-2))}\)

\(= 8 x^3 y^3\)

4.2. 例題 2:負の指数を含む割り算

\(\displaystyle \frac{12 a^3 b^{-4}}{4 a^{-2} b^{-1}}\)

  • 計算のヒント: 底ごとのグループ化と法則2の適用
    • 定数、変数 \(a\)、変数 \(b\) の部分に分けて、法則2(割り算は指数の引き算)を適用します。

\(\displaystyle \left(\frac{12}{4}\right) \times \left(\frac{a^3}{a^{-2}}\right) \times \left(\frac{b^{-4}}{b^{-1}}\right)\)

\( = 3 \times a^{(3 – (-2))} \times b^{(-4 – (-1))}\)

\( = 3 \times a^{(3 + 2)} \times b^{(-4 + 1)}\)

\( = 3 a^5 b^{-3}\)

最終的な答えは、負の指数の定義 \(a^{-n} = 1/a^n\) に基づき、負の指数 \(b^{-3}\) を正の指数に直し、分数の形で終了します。

\(\displaystyle 3 a^5 b^{-3} = \frac{3 a^5}{b^3}\)

第5章:整数の指数のまとめ

5.1. 整数指数における完全な指数法則

本記事では、「整数の指数」に焦点を当て、自然数からゼロ、そして負の指数へと定義を拡張してきました。全ての拡張は、既存の指数法則を維持するためという一つの論理に基づいています。

以下の法則は、指数 \(m, n\) がすべての整数である場合に拡張され、適用できることになります。
ただし、底 \(a, b\) はゼロではありません (\(a \neq 0, b \neq 0\))。

No.法則
\(m, n\) は整数, \(a, b \neq 0\)
解説
1\(a^m a^n = a^{m+n}\)掛け算は指数の足し算
2\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n} = a^{m-n}\)割り算は指数の引き算
3\((a^m)^n = a^{mn}\)累乗の累乗は指数の掛け算
4\((ab)^n = a^n b^n\)積の累乗
5\(\displaystyle \left(\frac{a}{b}\right)^n = \frac{a^n}{b^n}\)商の累乗

以下の定義により、すべての整数指数において5つの指数法則が成り立つようになり、複雑な計算も一貫したルールで処理できるようになりました。

指数の種類定義
自然数指数 (\(n>0\))\(a^n = a \times a \times \dots \times a\)
ゼロ指数 (\(n=0\))\(a^0 = 1\) (ただし \(a \neq 0\))
負の整数指数 (\(n<0\))\(\displaystyle a^{-n} = \frac{1}{a^n}\) (ただし \(a \neq 0\))

5.2. 次回予告:分数指数(累乗根)の世界へ

次のステップは、さらに指数を「分数」に拡張し、\(\sqrt{}\)(ルート)で表される累乗根の世界へと進みます。
分数指数を定義することで、指数法則は有理数全体で成り立つようになり、計算の柔軟性が格段にアップします。

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