前回記事では、対数(log)の正体が「指数の力そのもの」であることを学びました。
「\(2\) を \(8\) にするには何乗すれば良いのか?」= \(\log_2 8\)
この視点さえあれば、今回学ぶ「対数法則」も、まったく新しいルールではありません。
すでに知っている(あるいは指数の記事シリーズで学習した)「指数のルール」を、log で言い換えただけなのです。
本記事で紹介する公式をただの呪文として暗記するのではなく、その裏にある「当たり前」の仕組みを紐解いていきましょう。
目次
第1章:「真数の掛け算」が「対数の足し算」になる仕組み (積の法則)
頻繁に使うのに、最も不思議に思われがちなのがこの公式です。
対数には、「真数の掛け算」が「対数の足し算」になる法則があり、「積の法則」と呼ばれます。
\(\log_a (MN) = \log_a M + \log_a N\)
この一見不思議な現象も、前回記事の「\(0\) の個数(指数)を足したら、元の数は掛け算になる」という話を思い出せば、すんなり納得できます。
1.1. 指数のルールを思い出そう
ここで指数法則の基本を復習しましょう。
例えば、\(10^2 \times 10^3 = 10^{2+3} = 10^5\) ですね。
これを文章で表現すると以下のようになります。
- 「\(10\) を \(100\) にするための指数」は \(2\)
- 「\(10\) を \(1,000\) にするための指数」は \(3\)
- 「このパワー同士を足した「\(5\)」は、「\(10\) を \(100,000\)(\(100 \times 1,000\))にするための指数」になっている。
1.2. log での表現に翻訳する
1.1. の日本語の文章を、そのまま \(\log\) の記号で書き換えてみます。
- \(10\) を \(100\) にする指数は \(2\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 100 = 2\) [\(\cdots ①\)] - \(10\) を \(1,000\) にする指数は \(3\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 1,000 = 3\) [\(\cdots ②\)] - \(10\) を \(100,000\) にする指数は \(5\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 100,000 = 5\)
ここで、一番下の式の指数 \(5\) を、「\(2 + 3\)」に分解してみましょう。
\(\log_{10} 100,000 = 2 + 3\)
前述の①、②より、\(\log_{10} 100 = 2\), \(\log_{10} 1,000 = 3\) なので、それぞれの log を2と3の代わりに置くと次のようになります。
\(\log_{10} (100,000) = \log_{10} 100 + \log_{10} 1,000\)
最後に、\(100,000\) は \(100 \times 1,000\) に分解できますね。
これを左辺と置き換えると次のようになります。
\(\log_{10} (100 \times 1,000) = \log_{10} 100 + \log_{10} 1,000\)
以上で、まさしく「真数の掛け算」が、「対数の足し算」とイコールであることが確認できました。
第2章:「真数の割り算」が「対数の引き算」になる仕組み (商の法則)
掛け算が足し算になるのに対し、「割り算」は「引き算」に対応します。
この法則を「商の法則」と呼びます。
\(\displaystyle \log_a \left( \frac{M}{N} \right) = \log_a M – \log_a N\)
2.1. 指数のルールを思い出そう
指数法則には、\(10^5 \div 10^3 = 10^{5-3}\) というルールがありました。
この式が意味しているのは、以下の事実です。
- \(10\) を \(100\)(\(100,000 \div 1,000\))にするために「何乗すれば良いか」、つまり「指数」を知りたい。
- その答えは、\(100,000\) にするための「指数」から、\(1,000\) にするための「指数」を差し引くだけで求められる。
2.2. log での表現に翻訳する
1.2. と同様に、日本語の文章で表現した内容を、\(\log\) の記号で書き換えます。
- \(10\) を \(100,000\) にする指数は \(5\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 100,000 = 5\) \quad\(\cdots ①\) - \(10\) を \(1,000\) にする指数は \(3\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 1,000 = 3\) \quas\(\cdots ②\) - \(10\) を \(100\) にする指数は \(2\)
\(\rightarrow \quad \log_{10} 100 = 2\)
一番下の式の \(2\) を「\(5 – 3\)」に置き換えると、本章の冒頭で紹介した公式の形になります。
\(\displaystyle \log_{10} \left( \frac{100,000}{1,000} \right) = \log_{10} 100,000 – \log_{10} 1,000\)
このように \(\log\) を使うことで、桁の大きな数同士の「割り算」を、よりミスが少ないであろう「引き算」という簡単な計算にランクダウンさせることができるのです。
第3章:「真数の累乗」が「対数の掛け算」になる仕組み (累乗の法則)
対数法則の3つ目は「累乗の法則」と呼ばれ、真数の肩に乗る指数を、前(log の左) へ送り出すことができるという公式です。
\(\log_a M^k = k \log_a M\)
なぜ「累乗(\(k\) 乗)」という計算が、「\(k\) 倍(掛け算)」に変わってしまうのでしょうか。
その仕組みは、これまでに学んだ法則を積み重ねることで論理的に導けます。
早速、その仕組みを詳しく確認していきましょう。
3.1. 累乗を「掛け算」の形に戻してみる
例として、\(\log_{10} 100^3\) を考えます。
まず、真数の部分にある「\(100\) の \(3\) 乗」を、あえて元の掛け算の形に書き戻すと次のようになりますね。
\(\log_{10} (100 \times 100 \times 100) \quad \cdots①\)
すると、どうでしょう。
第1章で学んだ「真数の掛け算は、対数の足し算になる」という法則が適用できる形になりました。
3.2. 足し算に変換、掛け算にまとめ直す
前セクションの式①を、第1章の法則に従って、この式を「対数の足し算」の形に変換します。
\(\log_{10} 100 + \log_{10} 100 + \log_{10} 100\)
ここで、「同じ数(指数)を \(3\) 回足している」という点に注目してください。
算数の基本ルールにおいて「同じ数を \(k\) 回足すこと」は「\(k\) 倍すること」と等しいため、次のようにまとめることができます。
\((\log_{10} 100) \times 3 \quad \cdots②\)
3.3. 「累乗」から「掛け算」への変換
ここまでに導出した①と②をまとめると、以下の式が成り立ちます。
\(\log_{10} 100^3\)
\( = \log_{10} (100 \times 100 \times 100) \quad \cdots①\)
\( = (\log_{10} 100) \times 3 \quad \cdots②\)
ゆえに
\(\log_{10} 100^3 = 3 \log_{10} 100\)
第4章:公式を正しく使うための2つの前提条件
これまで見てきた3つの法則(積・商・累乗の法則)は、どんな時でも無条件に使えるわけではありません。
計算を行う際には、必ず次の2つの前提条件を満たしている必要があります。
- 計算の過程に登場する「すべての真数」が正であること
- いずれの法則を用いる場合も、真数は常に正(\(>0\))でなければなりません。
- 演算する対数の「底」が一致していること
- 「積の法則」や「商の法則」を用いて複数の対数をまとめたり分割したりする場合、それらの底がすべて一致していることが条件です。
上記 2 の法則は、「累乗の法則」では気にする必要がありません。
「累乗の法則」は1つの対数の中だけで完結するルールだからです。
また、「底が一致していない対数はどう計算すれば良いのか」については、次のステップに委ねます。
まとめ
本記事では、対数法則の3つの柱を解説しました。
これらはすべて、第1回で学んだ「指数のルール」を対数の言葉に書き換えたものです。
- 積の法則: 「真数の掛け算」を、対数の「足し算」へ変換できる。
- 商の法則: 「真数の割り算」を、対数の「引き算」へ変換できる。
- 累乗の法則: 「真数の累乗」を、対数の「掛け算(\(k\) 倍)」へ変換できる。
対数というフィルターを通すことで、「掛け算・割り算・累乗」という演算を、それぞれ一段階簡単な「足し算・引き算・掛け算」へとランクダウンさせることができます。
次のステップ
今回の法則によって、底が同じ対数であれば、その計算を思いのままに進められるようになりました。
しかし、「底がそろっていないケースはどう計算すれば良いのか」という疑問が残りましたね。
そこで次回は、底を自由自在に作り変えることができる「底の変換公式」を攻略します。
これで、対数の基本的な計算ツールのすべてが出揃います。


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